今日から9月。新しい月の初めに、私が一晩で気持ち良く読み上げてしまった本を紹介したいと思います。中国人作家として、初の芥川賞に輝いた揚逸氏の受賞作「時の滲む朝」。1989年の天安門事件によって、大きく人生が変わった地方の大学生らの青春と挫折、そしてその後の人生を優しい目線で描いています。私にも鮮明に蘇る天安門事件。当時、大学生だった私もこの小説の主人公たちと同時代を生きてきたことになりますが、この間の中国の発展と変化に戸惑いつつも、大事に思うものへのこだわりが胸に落ちました。劇的な感動ではなく、しみ入るような人生の機微が見事に描かれ、それが評価されての受賞だと納得。小説の主人公が実在していたら、北京五輪をどう感じたか…。秋の夜長にお薦めの1冊です。14:20