この夏に読んで印象に残った「大地の咆哮(ホウコウ)」を紹介します。著者の杉本信行氏は前上海総領事で、今月初旬に肺癌でお亡くなりになっています。すなわち、病と闘いながら、自らの対中国外交の現場を振り返り、渾身の力を振り絞って記した遺作なのです。最近の靖国問題のみならず、日中間には様々な問題が横たわっていますが、著者によれば、これだけ相互依存関係を深め、今やアジアのみならず世界の安定的な発展に不可欠となった日中関係において、5年間も首脳同士の対話が中断するという異常な状態には、あらためて強い違和感を覚えると結んでいます。この1冊は秀逸な現代中国論であり、体当たり取り組んだ対中国外交への情熱に深い感銘を受けました。9:55