衆議院議員手塚よしおWEB。立憲民主党 東京都第5区(世田谷)。都議1期、衆院5期、元内閣総理大臣補佐官。現在、立憲民主党幹事長代理、東京都連幹事長など。

2005年4月11日 「小説履歴書」中村公太朗

 記された熱意、決意、そして覚悟が、たった数枚の書類にずしりとした存在感を与えている。一部一部に目を通すたび、その人物のこれまでの歩みがまるでドラマのように脳内映写機に再現される。そのドラマは演者が全身全霊体当たりなだけ、見る側にも当然の如く強い緊張感が強いられる・・・。
 10人目の書類を机上に置いた手塚は、女性スタッフにコーヒーを頼んだ後、目頭に指をあてながら椅子の背もたれに身体を預けた。夏の都議選を控え49人の公認を決定し、目標である50人以上の公認まであと僅かのところまでたどり着いたが、都連の幹事長という大役は一歩たりとも立ち止まることを許さない。公認候補者の経歴書をまるで愛読書のように熟読し、そこから必勝のプランを弾き出さなければいけない手塚の脳は「24時間、政治家」のキャッチコピーを常に実践している。
 一度思考を止めコーヒーを口に運んだ手塚は、ふと思い出したように私に、
「おい、ちょっとアレを出してくれ」
と短く命じた。命じられた私は、
「代議士、もう今週2回目ですよ」
と、自ずと口角を吊り上げながら、心にもない心配を口にした。「禁」(注:触るな危険)と題されたXファイルから1枚の書類を取り出した私は、しかしそれまでとは打って変わったおごそかな面もちで、まるで神聖な儀式であるかの様にゆっくりと手塚の前まで歩を進めた。そして一見机上に積み上げられた都議選候補者の経歴書となんら変わらない衆議院選挙区限定公募申請経歴書を、手塚の御許にそっと捧げた。
 民進党が次期衆議院選挙に向けて公認候補が決まっていない選挙区限定で新聞各紙に載せた候補者公募の広告は、全国の有望な人材からのとても多くの応募を党本部へと届けさせた。と同時に、手塚事務所の歩くビックリ箱こと平野ハルモチの高い志にまで火をつけてしまったのだ。そしてハルモチのこの上なく熱い想いで完成された経歴書は、戦い疲れた手塚のほんのつかの間の休息に潤いを与える必須アイテムとなった。なぜならそこに記された一語一語には、驚き、笑い、そして「?」が、見る者全てに約束されていた。
 得意な科目:日本史、経営学、人間学、・・・?
 自覚している性格:明るい、朗らか、君子豹変す、・・・??
 特技など:すぐに人と打ち解けられる、人物鑑定眠、・・・???
 もはや人物鑑定眼が人物鑑定眠になっていることなど些細な問題で、始めから終わりまでほとんど意味が分からない。お目付け役でもある松田秘書の、まさに命懸けの制止を振り切りポストへと投函された申請書は、党本部の門をくぐることなく、見事に手塚事務所禁断のファイルへと殿堂入りを果たした。
 手塚は何度目かの同じポイントでひとしきり笑った後、脇腹に若干の腹痛を感じながら、書類から顔をあげた。はっきりしているのは、ハルモチがこの経歴書を大真面目に作成し、手塚にとって何かアクションを起こすたびに完全無欠の笑いを提供してくれるハルモチが愛すべき秘書であるという事実である。
 腹痛と共に軽い頭痛を覚えた手塚は11人目の都議候補経歴書を手に取った。弛緩していた体がギアを入れ始め、それに併せるようにゆっくりと思考が回転数を上げてゆく。手塚は都議選モードへと入っていった。
 春爛漫。暖かい陽気が万民に等しく眠気をプレゼントしていたが、夏に向けた手塚の戦いはまだ始まったばかりだ。

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