衆議院議員手塚よしおWEB。立憲民主党 東京都第5区(世田谷)。都議1期、衆院5期、元内閣総理大臣補佐官。現在、立憲民主党幹事長代理、東京都連幹事長など。

2003年9月1日 「小説駅頭」中村

 通勤・通学者が増え始めた朝の自由が丘駅ロータリーに、1台の車が滑り込んだ。すでに到着していた数名の若者が素早く近づき、車のトランクから看板やマイクを慣れた手つきで降ろしていく。同時に助手席から少々大柄な男が姿を見せた。若者たちの挨拶にねぎらいの言葉を返しながら、改札付近の定位置へゆっくりと歩み寄っていく。
 その男の名は手塚よしお。目黒・世田谷を地元とする衆議院議員である。毎朝のように繰り返される駅頭演説は、手塚にとって国会に向かう前の大事な儀式なのだ。首から携帯を下げた若者に二言三言の指示を出した後、マイクを握り話し始めた。
 この儀式は10年目を迎え、その間、駅に向かう雑踏へ訴え続ける手塚と、彼の写真が貼られた看板を置く位置だけは変わることがない。初めて駅で喋り出した頃から変わったのは、年齢の十の位と手伝う若者の顔ぶれだけだ。
 軽快に続いている演説が止み、ひたむきにビラを配っている若者が一斉に振り返る。手塚は高齢の女性と話し込んでいる。自由が丘は手塚の生まれ育った地であり、友人・知人が多数存在するため、声を掛けてくる人も他の駅に比べて圧倒的に多いのだ。手塚の表情から、決してからまれている訳ではないと知り安心した若者たちがビラ配りに戻り、しばらくすると手塚の演説も再開された。
 8時を過ぎた頃になると、駅に向かう人もさることながら、駅から降りてくる人の数が増えてくる。近くの高校に通う学生の通学時間だからだ。手塚は現在36歳、国会議員の平均年齢を著しく下げている。そして20代半ばの若者と行動を共にしている。しかしこの時間帯になると手塚の視線の多くは10代の学生たちに注がれるようになる。政治に対する興味は多分ないであろう学生たちに、それを知りつつも、次の次の日本の将来を見据えて話しかけているのだ。
 9時になる少し前に、感謝を述べて演説を終了する。若者が片付けている間に、ロータリーに面したいくつかの商店へ挨拶に行き、騒音の迷惑を詫びる。ほとんど同じように繰り返される儀式は、しかし一つ一つの行動に気持ちを込めていなければ、1年と続かなかったであろうし現在のような反響もなかったであろう。
 挨拶が終わる頃を見計らって車が寄せられ、1度空を見上げてまぶしさに手をかざした手塚は、来た時と同様に助手席に乗り込んだ。車は朝のすがすがしい空気を切り裂くようにして国会議事堂の方向に走り去った。
 儀式の終了を見届けた自由が丘の街が、本格的に動き出した。時計の針はちょうど9時を指していた。

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