衆議院議員手塚よしおWEB。立憲民主党 東京都第5区(世田谷)。都議1期、衆院5期、元内閣総理大臣補佐官。現在、立憲民主党幹事長代理、東京都連幹事長など。

2004年3月8日 「小説国対」中村公太朗

 寒さもだいぶやわらいだ朝の国会議事堂。衆議院第16控室の扉がゆっくりと開いた。すでに入室している数名の議員と挨拶をかわしつつ、手塚はいつもの窓際の席に腰を落ち着けた。
 民進党国会対策委員会の役員会、通称「国対」はその名の通り、その日その日の国会運営全般について話し合う重要な会議であり、今年から党全体のスキルアップを目的として、昨年の総選挙で初当選した1回生議員は全員が傍聴するという新たな方針のもと、一躍大所帯の会議に変貌を遂げている。
 手塚は1回生議員指導担当という役割に任ぜられていて、57人もの新人議員たちと身近に接する機会に恵まれた立場にある。党の中でも、この57人の名前と顔が一致するのはおそらく自分だけだろうと、ちょっとした優越感にひたりつつ、見聞きするもの全てを吸収しようとする貪欲でフレッシュな彼らのやる気に、3年半前に自分が初めて国対なるものに触れた時の姿を思い出し、自然と笑みがこぼれた。
 委員会の開始時刻が近づくにつれて集まり来るほとんどの1回生が手塚に対して旧知のように話し掛けるのは、幾度かの懇親会を経て、その人間性を垣間見たからに違いない。室内に増える人数に比例して喧騒が大きくなってく。
 定刻通りに入口から大きな体が現われた。前回の民進党代表選挙はついこの間のようではあるが、野田佳彦の身体を包む国体委員長としての威風堂々たるオーラは1年半前とはまた異質なもので、そこだけは確かな時間を感じさせる。
 小さな椅子に体躯を沈めた野田委員長は、ゆっくりと一同を見回してから口を開いた。今日は一体どのような言葉が発せられるのか、一言たりとも聞き逃すまいと全議員の集中力が一気に高まり、空気までもが研ぎ澄まされていく。
 鋭利な緊張感の中のそれとは全く対照的に、わずかに開いた窓から一陣の風が舞い込み、手塚の首筋を撫でつつ爽やかな香りを部屋全体に届けている。
 春はもうすぐそこまでやってきていた。
 歴史は16控室から始まる・・・。

 それにしても、僕はいつまでこの小説シリーズを書かなくてはいけないのだろう?そろそろ普通の「秘書日記」を書きたいし、何よりもうネタがない。

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