衆議院議員手塚よしおWEB。立憲民主党 東京都第5区(世田谷)。都議1期、衆院5期、元内閣総理大臣補佐官。現在、立憲民主党幹事長代理、東京都連幹事長など。

2009年9月1日 内野席「冷静と情熱のあいだ」松田哲也

 衆院選も終盤を迎えた金曜日、4年前は手塚さんの秘書として一緒に戦った蓮孝道群馬県みどり市議が都立大学駅にやってきた。
 彼は7月の都議選も何度となく応援に駆け付けてくれた。
 ステージ4のガンを宣告されていることや、8月に大きな手術が控えていることを都議選が終わるまで誰にも話すことなく。いつもと変わらず笑みの眉を元気に開いて。
 約1ヵ月ぶりの再会だった。手術は成功しても、全身に残る激しい痛みと抗ガン剤で奪われていく体力。そして長旅による疲労感。立っているのがやっとという体だった。
 ビラ配りを始めたけど続く訳がなく、駅前のベンチに座り込んだ。
 しかしそれでも顔だけはニコニコ。相変わらず白い歯を見せていた。
 向かう笑顔に矢立たず。
 彼の前に立てばどんな悪意も消えてしまうだろう。
 過去の数々の選挙戦でもそうだった。肉体的に精神的に極限状態の中にあっても、人に刃を向けず自分にも刃を向けさせなかった。
 私はそんな彼を見ながら高句麗の第19代好太王と重ね合わせていた。
 好太王は韓国人が歴史上の人物の中で最も愛し、次の高額紙幣候補ナンバー1にもあがっている為政者だ。
 この王は敵を殺さず味方も殺させない。外交を多用し城を次から次に落としていく。
 武力を行使する時も高い製鉄技術で造られた軽い鎧で、相手の矢を弾きながら疾風のごとく城に入城する。そして城主や家臣を拘束し高句麗の政治を受け入れるよう迫る。
「死んでも降伏はしない、殺せ」
 そう応える城主にはこう告げたという。
「統治を拒むものがいても殺さないし、捕虜にもしない。武器を捨てるなら城外に出て民として生きることを許す。隣の城にもそう伝えよ」
 更に
「城主の倉庫にあった食糧や金品はもとは民の物。直ちに民に返す」
 1600年前の韓国の政治と現代の日本の政治を、蓮孝道を通して重ね合わせた2009年夏の衆院選は終わり、祭りは終わった。
 4年前の夏、小泉純一郎の大団円に国民は熱狂した。しかし何も変わらなかった。そのことを国民はよく知っている。
 だから今回の夏、前回の熱かった夏を超える投票率で、歴史的な衝撃的な結果を出したにもかかわらず、世間は早くも冷めている。
 しかしこうして冷静と情熱を繰り返しながら、政治は昇華されていくのだろう。そして誰しもそのあいだを揺れながら、蟋蟀(コオロギ)のように脱皮を繰り返し最後にあの美しい音色を放つのだろう。
 華やいだ祭りのあと静まる街を背に、蓮孝道は群馬に帰っていった。その背中を見送りながら涙が零れないように顔を上げた。空には洗ったような銀箔の月がのぼっていた。
 4年前「手塚よしおは負けない」と願いを込めたあの時と同じように、彼を蒼く優しく包むその月にもう一度だけ呟いた。
「蓮も負けない。絶対に負けない」
 蓮孝道は故郷に置くと決めた彼のラジオから、これからもいくつものメロディーを送り出し、いくつもの時代を作り出すだろう。
 そして手塚さんは4年間置き忘れた天弓を取り戻しに間もなく国会に入る。満月のように大きく弓を引き絞り満を持して矢を放つだろう。政と祭りを繰り返し、冷静と情熱のあいだに作りあげてきたチームとともに。

内野席・外野席

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