衆議院議員手塚よしおWEB。立憲民主党 東京都第5区(世田谷)。都議1期、衆院5期、元内閣総理大臣補佐官。現在、立憲民主党幹事長代理、東京都連幹事長など。

2005年1月15日 内野席「板前ものがたり その1」伊藤 悠

7年間の修行を経て、26歳で独立、小さいながら地元目黒に店舗を構えるようになった板前が、今度は花の大東京に出店する運びになった頃、振り返って世話になった師匠の店を覗き込むと、こんなことが起こるわけです。
まず、気づけば弟子の数がやたらと多い。自分がいた頃は、花板のオヤジさん以外、弟子はせいぜい数名だったものが、煮方、焼き方、洗い場とざっと10人の弟子たちがひしめいている。
自分はいつまでも「俺もまだまだ半人前だと」思っていても、周りからみれば、どうも様子が違ってきているようで、オヤジさんからこんな風に怒られたの、褒められたの、という話しをすると途端に食いついてくる弟子たちがいる。
弟子たちは、自分の置かれている立場を知りたがる。オヤジさんに聞けば
「100年早い!」
とどやされるのがオチだから、兄弟子に聞きたがるのは当然のこと。だからって簡単に答えるわけにはいかないね。こちとらは、独立の身だから、安請け合いで
「お前さんは、今どうで、こうで…」
なんて言ったひには、店の秩序を取り仕切る松田の番頭さんが黙っちゃいない。
そこで、黙って帰るんじゃ粋じゃないから、こんな話しを聞かせて帰るようにしてるわけですよ。
「お客さんも帰ったようだから、まぁ、一杯やりならながら話そうか。ビールでも持ってきてくれ」
「どうも皆さん秘書の仕事について、ちょっと誤解があるようですよ。そう、オヤジさんのご機嫌取りになっちまってるんだな。ああ俺?そりゃやったさ。好かれたいのは皆同じってわけだ。だけどね、ただのご機嫌取りじゃ、うまかないときもあるよ。その話しをしよう。まぁ、もう一杯飲みねぇ」
「じゃあ皆さん、こんな時、皆さんだったらどうするよ?あれは、俺が修行4年目だったかな。年の瀬を向え、オヤジさんに呼び出されたわけだよ。『おい、悠、悪いけど元旦にお遣いを頼まれてくれ』ってな。なんでも、オヤジさんも頭が上がらねえ、聞いて驚くなよ、鳩山の大オヤジさんのところに、店自慢のおせちを届けてくっれてんだ。聞けば毎年恒例でお届けしてる品なんだそうだけど、今年に限ってはオヤジさんが海外出張で自分じゃ届けられねいってんだな。『悠、くれぐれも粗相のないようにな』ってな。鳩山の大オヤジといえば、こっちの世界じゃ元祖家本だから、粗相もクソも、した瞬間にゃ修行の身なんぞ吹っ飛ぶことは、さすがの俺も百も承知でよ。思わず音羽に向って『ははー』って頭下げちまったぐれいよ。おい、わかるか新人。鳩山の大オヤジって聞いたことあんだろ。よう、もう一杯入れてくれ」
「そこで、前日から体調整えるくらい万端にしてよ。そりゃ、胡蝶蘭でも運ぶみたいに丁重におせち抱えてご自宅に上がったわけよ。ネクタイは曲がってねいか、口は臭くねえか、なぁ公太朗、気をつけろよ。庭先で観葉植物踏んじまってねえかとか、そりゃ大変よ。ようやくインターホン押す頃には、ご挨拶の練習30回目、『手塚の遣いで参りました』ってな。そしたらどうだい、有名な鳩山亭の一番弟子小沢の兄さんが対応してくださるじゃねえか。うれしかったねぇ。『こちらが手塚からの品でございます』っていうと、驚いたことに小沢の兄さんはこう言ったよ。『それはありがとうございます。今、オヤジが居間におりますので、ちょっと届けてきますから、そこでお待ちを』ってな。もしかしたらお見えになるかもしれませんって話しだぞ。おい、わかるか、そこの新人。引きこもってる場合じゃねぇぞ。いやぁ緊張したね。思わず玄関にあった知らねえ人の靴まで並べちゃったもん。何しゃっべっていいんだ?料理の説明できるだろうか?お年玉もらっちゃったらどうしよう?考えたわけよ。ところが違うんだな。もっと困ったことになっちまったんだな。えっ気になる?先を教えろ。一気に話しちまいたいところだけど、今は片付けの時間だろ。来週また来るからその時にな。おい、新人、ちゃんと鳩山の大オヤジのことぐらい次回までに調べておけよ」 (続く)

内野席・外野席

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