衆議院議員手塚よしおWEB。立憲民主党 東京都第5区(世田谷)。都議1期、衆院5期、元内閣総理大臣補佐官。現在、立憲民主党幹事長代理、東京都連幹事長など。

2009年8月5日 内野席「決着の夏」伊藤 悠

夜の11時に電話が鳴った。
深夜営業も厭わない政治家とはいえ、手塚氏からこの時間に電話がかかってくることは珍しい。どうしましたか?と聞いて驚いた。
「今、野田(佳彦)さんから電話があって、明日の代表選挙で岡田さんの応援演説に立ってほしいって頼まれたんだ」という。
朝の駅頭に付き合うのとはわけが違う。
日本中が注目する民進党代表選挙の応援演説だ。
「何人が、応援演説するのですか?」
「2人だけ」
と聞いてさらに驚く。
「浪人生はもちろん俺だけ。明日の会場で投票を決める議員も多いはずだ。せっかく任せてもらったんだから、乾坤一擲の演説をしなくちゃいけない」
そう言う声に浮かれた様子は微塵もなかった。大変な役目を負ったこと。そして、ここで登板を許される自分の業に思いを巡らす、深遠な声だった。そして言葉少なに電話は切れた。
深い。この人選は深いと思った。
岡田さんに手塚起用を進言したのは、おそらく野田さんだろう。
野田さんは数百票の僅差でバッジを失ったことがある浪人体験者の一人だ。
岡田さんは4年前の郵政選挙の民進党代表だった。
「落選者を出したのは俺に責任がある」
と自分を責め続けたリーダーが、落選経験のある野田さんと相談して出した結論は、
「苦労をかけた手塚さんに任せよう」
だったのだ。
翌日、私の携帯が鳴った。
今度は親しい新聞記者だった。
「伊藤さん、よかったよ。よかったですよ。本当によかった。取材していた記者達もジーンときていましたよ。だって泣かすじゃないですか、手塚さんの応援演説。本音で語ってるんだもん」
記者からの電話2時間前の代表選挙会場。
「みなさん、ご無沙汰しています」
マイクを通したその声に、会場の国会議員はドッと笑った。たしかに、ご無沙汰している。しかし、ここでいうとは思わなかった。ここは民進党の国会議員が集まる両議員総会。それも小沢代表の辞任で行なわれている緊迫の代表選挙の会場だからだ。
岡田克也代表候補の応援演説が浪人生の手塚だと聞いて驚かされた国会議員は、常に笑いを取ることを忘れなかった手塚仁雄に二度驚かされた。
笑いが収まった頃、手塚はこう切り出した。
「浪人生代表の手塚仁雄です」
ここは現職議員からの笑いが起きない。決して笑えないのだ。そして続ける。
「私は4年前の郵政選挙で苦杯をなめ、落選を致しました。負けた翌日から議員会館の引越しに始まり、仕えてくれていたスタッフの再就職、自らの生命保険の解約、自家用車の売却…、筆舌に尽くしがたい痛恨の日々でありました。ただ、民進党の未来は明るいと思います。民進党は本当に強くなりました。この間、小沢代表、鳩山幹事長のもと、参議院で逆転し、安倍内閣を追い込み、福田内閣を追い込み、麻生内閣を追い込み、政権交代への期待が日に日に高まっています」
そして続ける。
「私に代表選挙の1票はありませんが、この3日間あえて『岡田克也さんにご支援を』へという看板を掲げて街頭に立っています。街の反応は六・四、七・三ではありません。十中八九の民意が明確です。ここで民進党が変わったということを、本気で政権を獲りにいくという姿勢を見せなくてはいけません。岡田克也候補へのご支援をよろしくお願い申し上げます」
万感の思いをこめた乾坤一擲の演説が終わった。拍手が起きた。拍手はしばらく鳴り止まなかった。拍手は何に送られたのだろうか? 演説力か、人選か、はたまた落選への同情か?
前出の記者は言った。
「みんな思ったんですよ。現職の議員だって落選の可能性があったでしょ。あんな選挙で多くの仲間を失ったんだと。忘れかけてた悔しさを浪人生の手塚さんが呼び覚ましてくれたから岡田だろうが鳩山だろうが、議員も泣き、記者も泣いたんです。やっぱり民進党は強くなってますよ」
いよいよ「決着の夏」を迎える。

内野席・外野席

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