衆議院議員 手塚よしお
手塚の独り言手塚コラム
 

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民進党

2006年12月18日
NO.264
「エブリに乗って」 田浦貴明

 エブリを初めて見た時のことをネズミは克明に覚えている。純白のボディーに二つのヘッドライト、片開きのドアを持つ車両が、輝かしい光を放ちながら五本木を飛び出した。その時の情景を思い出すたびに、ネズミは不思議な錯覚に捉われる。自分は事務所にへばりついて、皆と一緒にエブリを見送っていたはずなのに、もう一人の自分がエブリに乗って、事務所を見ている。手塚がどっしりと構えている。中村秘書がエブリを指差して笑っている。橘秘書が挙動不審に何か大声で叫んでいる。そして、立ちすくんでいる自分を、もう一人の自分がエブリの窓からしっかりと事務所を見つめているのだ。もしかしたらこの瞬間、魂が肉体からエブリに乗り移っていったのかもしれない。
 ネズミはそれくらいエブリに憧れていた。エブリに乗って街を走る。目黒通りの夕映えが、母親の胎内からこの世に生まれた時のように鮮烈である。自由が丘の街に着き、ネズミはエブリを降りた。駅では『田中角栄逮捕!』との新聞号外を配っていた。街ではピンクレディーが流れている。ネズミは何となく懐かしい気持ちになりながら、ポスターを貼りはじめた。すると一人の少年がこちらを訝しげに見ているのに気がついた。
「おい、お前、何やってんだ?」
少年はネズミを威勢良く怒鳴った。少年をあしらいながら、ネズミは作業を進めた。
「なぁ、お前、大変そうだな。やっぱ大人は大変なんだな…。父さんも母さんもじいちゃんもばあちゃんも、ついでに近所のおばちゃんもみんな大変そうだ、何でだろう…。俺が大人になったら、きっと総理なんとかにでもなって、みんなを大変じゃないようにしてやるんだ。おう、お前、あとちょっとの辛抱だからな、頑張れよ!おっ、そのポスターのオヤジ、俺と同じ名前じゃねえか。へえ、じゃあ、俺が大人になるまで、そいつに頑張ってもらわなきゃな」
少年は一方的にしゃべり終わると、これから仲間を助けに行くと言って、走り去っていった。ネズミは正義感溢れるこのヨシオという少年がいつか政治家になってくれれば、そう願った。
 ネズミが次に目指したのは高田馬場だった。印刷会社との打ち合わせだ。山手通りや明治通りは、今日はどういう訳か古くさい車ばかり走っている。ここは昭和か?そんなノスタルジックな気分に陥る。ロータリーにエブリを停めてネズミは歩き出した。すると、鳥安という飲み屋から、肩を組みながら二人の学生が飛び出した。
「哲、やっぱPLは強いなあ」
「清原と桑田は凄い選手になるな」
「哲、とりあえず、歌いに行こう。安全地帯覚えただろう?」
二人の学生はまだ6時だというのに、もう酔っ払っている。そして二人はネズミを見つけた。
「なんだこいつ、おい哲、こいつどっかで見た事ないか?」
「おう、俺も今、同じことを考えてた。不思議と愛着が湧くなあ。もしお前が本当に議員になったらコイツ、雇ってやりなよ?」
「そうだな。じゃあそれまで哲が面倒みといてよ」
酔っ払いの学生は、訳の分からないことを叫びながら去っていった。まるで昔の雄弁会の学生ようだった。ここまで来るとネズミもこの異常な雰囲気に薄々とある事に気づいていた。今のは学生時代の手塚かもしれない…。
 辺りは暗い。帰りの駒沢通り、ふと脇を見ると、手塚が大量のポスターを持って自転車に乗っていた。人違いだろうか。戸惑いながらも帰宅を急いでいると、今度は伊藤がポスティングをしていた。これも人違いなのだろうか。伊藤はあんなに顔が大きくない。やはりネズミの魂はエブリに乗って過去に来てしまったのだろうか。とすればこのまま行けば…。
 五本木に帰ってくると、青いTシャツを着た若者が大勢で万歳をしていた。報道陣のカメラもある。あ、井上秘書もいる。井上秘書はまるで学生のような初々しさだ。 その奥では手塚が深々と頭を下げていた。そしてこう叫んだ。
「これからが本当の戦いの始まりです。世の中を変えるためのこれが第一歩です!」
 悲しみも苦しみも喜びも鋼鉄のボディーに押しとどめてエブリは走る。忍耐の鎧を身にまとった寡黙な武士のようにエブリは走る。静かだが、勇敢な美しいエンジンの轟を、不撓の凱歌のように聴くたびにネズミは思う。そうだ。今日もエブリに乗っていこう。


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