衆議院議員手塚よしおWEB。立憲民主党 東京都第5区(世田谷)。都議1期、衆院5期、元内閣総理大臣補佐官。現在、立憲民主党幹事長代理、東京都連幹事長など。

2019年2月4日「二度目の春」柿澤雄太

「うちに省みて恥ずることなければ、百万人といえども我ゆかん」という有名な孟子の言葉があるけれども、百万人が前に向かって歩き始めているときにも、なおたった一人の者が顔を覆って泣くという状態もまた起こりうる。最大多数の最大幸福を意志する政治は当然そうした脱落者を見すててゆく。(中略)文学者は百万人の前の隊列の後尾に、何の理由あってかうずくまって泣く者のためにもあえて立ちどまるものなのである。(高橋和巳「孤立無援の思想」)
 これは、学生時代に文学を志し、今まさに政治の世界に足を踏み入れる私にとって真っ先に思い浮かべる一節だ。誤解を恐れずに言えば、私は「最大多数の最大幸福」を最優先にしたくはない。やはり「うずくまって泣く」個人にこそ最大の重きを置いていきたい。そんな自分が、手塚事務所の門を叩いた理由。それは、胸に理想は抱きつつも、常に現実に対峙する「行為者」としてありたいためだと思う。
 今思えば、大学を中退したのも同様の理由ではなかっただろうか。若気の至りと多少の反省をしているのだけれども、そんな若気の至りは今も何も変わっていなかったようである。
 当時の私の思いは、
「自分の生活が他者からの支援で成り立っている、いわば依存した状態で生活者の悲哀やその救済を云々して良いのか。生活が差し迫っていない状態での、自由への憧憬と考察に何の意味があるのか。必ずしも賛同しているわけではない現在の経済社会、生活環境にあえて身を置き、その中で存分に闘いながらも、その内に自由への意志と生活者の救済への希求を持ち続ける。現在の人間社会のあり方についての歴史的必然性は尊重しつつも、逆にその「魔術」を解明してやろう、乗り越えてやろう。」
というようなものだった。
 大学を中退し、その後10年以上人材派遣業界で営業として勤務してきたのだが、正直、選んだ仕事ではなかった。新卒採用のレールからこぼれおちた自分にとって、職業を選んでいる余裕はなかった。
 自分自身が非正規雇用であった時期もあるし、派遣会社の営業として労働市場の最前線にもいた。派遣労働の是非や、非正規雇用の問題は、改めて記したいと思うけれども、自分の成功体験から、自己責任論に陥っていた時期もあった。
 必ずしも望んだ仕事ではない仕事を続けてこれたのは、前述の中退時の思いも少なからずあるが、大きな要因は人生の要所要所での貴重な出会いであった気がする。
 大学時代の恩師との出会い、1社目のベンチャー創業社長や同僚、上司との出会い(まさに同じ釜の飯を食った)、3社目の大手派遣会社へ誘ってくれた役員や同僚との出会い(仕事のやり方を教えてもらった)、直近5社目への入社を誘ってくれた元々は取引先だった上司との出会い(2ヶ月しか在籍せずご迷惑をかけ、いずれ恩返しをと思っている)。それ以外も同僚、上司、クライアント、担当した派遣社員など、私の人生を前に推し進めてくれた出会いが多くあった。
 そして、今回の出会いもそんな私の人生の記憶に刻まれるものになるであろう。
 漠然と政治の世界に興味を持ちつつも、具体的な行動は何も起こせずにいた2017年、34歳を迎えようとしていた秋、立憲民主党が結党した。右か左かではなく下からの草の根民主主義。血が燃えた。私も何か力になれないか。力になりたいと強く思った。
 それでも何もできずにサラリーマン生活に一杯一杯になっていた昨年2018年の春に、今から5年ほど前に街頭演説をしている時にエイヤッ!と勢いで声をかけ、職場近くの駅前で知り合った、先輩の土橋秘書が手塚よしおの秘書に戻っていたことを、正にこのホームページで知った。
 しばらく躊躇した後、思い切って電話をかけた。手塚に会わせて頂いたら、即断を頂戴した。そこから今に至る。
 最後に、決意をここに記したい。
 冒頭記した通り、文学の責任と万人の幸福な未来という理想を胸に、しかしながら政治の力学とその現実に目を背けず、逃げず、自分自身の矛盾を安易な形で解消せずにとことん戦っていきたい。それが、自律した自由な個人を想定した、本来的な意味の民主主義の成立に寄与すると信じている。
 まずは秘書として、その先のことも視野に入れながら、誠実に、思いっきり戦って参ります。
「如何せん、如何せん」ととまどい苦渋しながらも、なお考察を放棄しもせず他者にもたれかかりもせぬことこそ、確かな、哲学の栄光であることを。そうである。かつてマルクスは「人間は人間にとって解決可能なことのみを設問する」と言った。しかし、われわれはむしろこう言いなおさなければならぬ。「およそ人間の為し、考えることで、人間にとって解決され得ないものはない」と。
(高橋和巳「葛藤的人間の哲学」)

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